「unframed」

もろもろ、言いたいことを整理しておきたいので

表通りから逸れた女たちによる「王道」の形:1/7〜1/13

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1/7〜1/13の週にリリース・発表された楽曲などを中心に、ウィークリーで自分の感性に引っかかった作品を書き留めていきます。

数もジャンルもバラバラ。音楽ではないコンテンツも今後入ってくると思います。

週間で更新していけるかはわかりませんが、それが習慣になっていけばいいな、と期待しつつ続けていければ。

では第1回目始めます。

 

<洋楽>

Camila Cabello『camila』

カミラ

AM | Spotify

Fifth Harmony脱退後、Young Thug、Quevoとのシングルを挟んでリリースされた初のソロ・デビュー・アルバム。「Never Be the Same」のラジオエディットを加えても全11曲で、トータルタイム36分というコンパクトさも丁度いい。何より、今をときめくヒットメイカーたちがこぞって参加したトラック毎のクオリティーの高さも抜群だ。

適材適所、必要な音しか存在せず、アイドルからアーティスト宣言した時に必死に背伸びをするような付け焼刃は今作には存在しない。前述した通り、それら全てはプロフェッショナルの仕事の下でこそ成立してはいるけど、タイトルに自身の名を掲げるだけあって全曲のソングライティングにはしっかりと"Camila"のクレジットがあることを伝えておきたい。

The New York Times」のインタビューで答えていた脱退理由からも分かる通り、彼女は"曲を書き歌うシンガー"でありたかったのだろう。Young Thugが客演したシングル「Havana」のヒットで得た成功への道標をしっかり辿ったこのデビュー作は、過剰なまでに自分と周囲を批評するTaylor Swiftや、新時代のディーヴァとして確固たる地位を得たAriana Grande、スキャンダル・スターから解放され、本格的に名盤を生み出そうとしているSelena Gomezらとは違う、2018年に設けられた新たなスターの座に着いたアルバムだ。

ちなみに今作にはQuevoとのシングル「OMG」は収録されていない。アルバムを一聴すれば分かるが、今作には「OMG」に見られる時流に沿ったトラップミュージックは極力排除されているのも非常の興味深い。代わりにムーブメント化したレゲトンや、彼女の出生地に絡んだラテンミュージックがメイントラックとなっていることで、一つの流行を後退させ、新鮮なリズムを前進させるハブとしての役割も担っている。なので今作には反映されてない、ここまでの彼女の校外実習とも言える外仕事にも耳を傾けることも重要で、すなわちアメリカの音楽チャートにおけるトレンドの推移が相対された作品でもあると置き換えることができる(Netflix限定で公開中の『Bright』のサントラに収録された「Crown」、Travis ScottとQuevoらとともに参加したエレポップレゲトン、Major Lazer「Know No Better」などはマストで押さえておいてほしい)。

今作が時代と相思相愛である理由はもう一つある。それは中音域(ボーカルやギターの鳴りなど)がとにかく綺麗に聴こえること。それによってスマートスピーカースマートフォンにおける、現行のリスニング環境にフィットしていることだ。僅かなブラッシングが聴こえつつ、Camila Cabelloの声がセンターにくるようなプロセスがなされている。

長々と綴っておきながら、今作におけて一番重要な点は、そんな"聴きやすさ"にある。その"聴きやすさ"についてがここまでの筋道である。音楽に思慮深い人も電車でたむろする女子高生も、皆が並列して聴くことができる作品として、このデビュー作は2018年にこそ聴かれるべきだと思う。

  

【その他のリスニング作品】

1. Jonny Greenwood『Phantom Thread OSTAM | Spotify

2. Maxo Kream『Punken』AM | Spotify

3. Jack White『Connected by Love』AM | Spotify

4. Shame『Songs of Praise』AM | Spotify

5. Black Eyed Peas「Street Livin'」AM | Spotify

6.  Jay Rock, Kendrick Lamar, Future, James Blake「King's Dead」AM | Spotify 

7. soccer mommy「Your Dog」(3/2リリースの新作『Clean』より)Bandcamp

8. kendrick Lamar CFB National Championship Half Time Show(「DNA.」「ELEMENT.」「HUMBLE.」「All the Stars」)

9. David Bowie「Let's Dance (Demo)」AM | Spotify

 

<邦楽> 

乃木坂46『僕だけの君 ~Under Super Best~』

僕だけの君 〜Under Super Best〜(初回生産限定盤)(DVD付)

テレビを付けてみても、チャンネルを変えてみても、書店で雑誌コーナーを見ても、スマートフォンの広告バナーが表示されても、とにかく至るところに彼女たちがいた2017年。

結成から7年目を迎えた乃木坂46は、2017年に一つの絶頂期を迎えた。活動初期からグループを支えたメンバーの卒業、人気と比例して押し寄せる数多の仕事のオファー。満を持して迎えた初の東京ドーム公演。そして紅白歌合戦まで続く一連の状況は、絶頂期を物語ると同時に、グループの"これまで"と"これから"を隔てる転換期でもあったと言える。

1月10日にリリースされた『僕だけの君 ~Under Super Best~』は、2011年から活動を続けてきた彼女たちの、紛れもないベストアルバムであると同時に、"アンダー"という存在を大肯定する作品集だ。ファンの人にとってみれば選抜だろうがアンダーだろうが、自分の推すメンバーやグループそのものにスポットライトが当たれば満足かもしれない。ただ、当の本人たちは"白石麻衣西野七瀬生駒里奈がいない乃木坂46"について常に向かい合わざるをえない。"アンダー"メンバーにとってのスポットライトとは、単にステージの上に立っていること、それだけではないのだ。

1stシングル『ぐるぐるカーテン』から最新シングル『いつかできるから今日できる』までと3枚のオリジナルアルバムに収録されたアンダー楽曲、そして4曲の新録曲をほぼリリース順に並べた今作。1曲目「左胸の勇気」はデビュー当初のフレッシュなグループの様子を閉じ込めており、現在では選抜として活躍する齋藤飛鳥がアンダーメンバーだった頃に初センターを務めた「扇風機」など、時間の流れを実感出来る楽曲が序盤に並ぶ。

2017年末のレコード大賞受賞や紅白歌合戦を観た新しいリスナーにとっては、今作には「インフルエンサー」などから発せられたクールでダンサブルなイメージを受けるような曲が多くない分、初めて手に取る作品としては少し面喰らってしまうかもしれない。それでも「嫉妬の権利」や「My rule」などは素直に楽曲の質の高さを感じることができる。そして「アンダー」という楽曲を歌詞を読み返しながら聴くだけでも、このアルバムのコンセプトを理解することができるはずだ。

デビューからのファンは特に新録された4曲に目がいくはずだろう。卒業した中元日芽香の初のソロ曲にしてラストソングである「自分のこと」は、グループをプロデュースし作詞を手がけた秋元康から彼女に向けられた最大のはなむけの言葉が綴られている。続く「自惚れビーチ」はアンダー楽曲として初の夏ソングにして、2期生の鈴木絢音が初センターに立ったアップチューンだ。高飛車なまでに強気な女の子に、ただただ振り回される男子たちのありのままを描いた楽曲がライブではどう表現されるか、今からとても楽しみだ。

同じく2期生の寺田蘭世がセンターとなった「その女」は、アンダーの多彩な表情が浮かび上がる変化球としてつかみどころのない楽曲に各メンバーの個性が滲み出ている。作詞家ではなく作家:秋元康が顔を出した曲であり、ラテンのリズムをベースにポエトリーディングの出だしから始まるその辺鄙さも、とても乃木坂らしいと今なら思える。そして、乃木坂46のアンダーメンバーとして胸を張り、ファンとの関係性を切ないメロディーに乗せて歌う「誰かのそばにいたい」でアルバムの幕が閉じる。最後にアンダーからリスナーへ向けられた「こうでありたい」という柔らかくも確かなメッセージは、転換期を迎えたグループを支える決意表明にも感じられた。

アンダーメンバーは選抜と違う。その呼称から同グループにおいて必然的に上下関係が生まれてしまった時期もあったはず。そして今は横にも縦にも属さない3期生の存在も忘れることができない。個人の活動はもちろん、選抜、アンダー、3期生という括りに対して、今後メンバーそれぞれがどんな向き合い方をするか。それは乃木坂46自体の行く末を決めることになると思う。

Real Sound」のインタビューにて、1期生の樋口日奈は「選抜にずっといたい」と発言している。それはアンダーが嫌だとかではなく、乃木坂46を引っ張っていける存在でありたいという決意からのものだ。同インタビューで寺田は「『らしさ』を大事にしたい」と口にしているのも面白い。個人の意見や主張が違ってこそ、グループとして集まった時に予測できない化学反応が生まれる。今作の歴史=アンダーらしさがこれまでの乃木坂らしさと掛け合わされた、2018年の乃木坂46はより魅力的なアイドルとして活躍するに違いない。

 

【その他のリスニング作品】 

1. PENGUIN RESEARCH『近日公開第二章』AM | Spotify

2. わーすた「WELCOME TO DREAM」AM | Spotify

3. 雨のパレード「What's your name?」AM | Spotify

4. フルカワユタカ『Yesterday Today Tomorrow』AM | Spotify

5. ヤバイTシャツ屋さん『Galaxy of the Tank-top』AM | Spotify