MY PLAYLIST 2018
2018年よく聴いた、または個人的に気に入った音楽を発表します。
各メディアや個人ブログでは視認性の高さから「年間ベストアルバム」と銘打っているようですが、私個人としては昨年から「MY PLAYLIST」と称してます。その理由は昨年のブログに書きましたが、改めて簡潔に述べると、自身のリスニング環境の軸がサブスクに完全移行したからです。
そのため、今回のリストの中にもEPが数枚入っています。流石にシングルを入れるか否かの判断まで考慮すると手間が掛かるので、あくまでアルバム/EPまでを対象としています。
2018年を一言で例えるなら...「10年後にシーンの最前線にいるであろう人が明らかになった」年、ですかね。
2年後には東京オリンピック、7年後には大阪万博と、国単位で日本が世界で注目されるわけで。だからどうした!、そういう意見もごもっともなんですが...でも、自国のカルチャーを需要していくであろう10代たちが、その瞬間世界の注視された時、ちゃんとフラットな気持ちで「日本はこうなんです」と思える状況が整っていてほしい、と個人的に思っています。
だからといって、ここに選んだ50枚が10年後、ひいてはオリンピックや万博を迎えるために重要なマスターピースだ、とは全然思いません。これから沢山の音楽に触れる事ができる未来の10代や若者に「2018年はこんな音楽あったよね」と振り返ってもらえる時が来ることを想像して、それなりにポップでタフな作品を選んだつもりです。
と、大言壮語なことを口にしてますが、あくまでここでは私個人の2018年に聴いた音楽作品をざっと並べてみた次第です…なのでもうスクロールして「あー、こんなの選んでらぁ」ぐらいで見ていただければ。
ちなみに昨年の1〜10位はこんな感じでした。
<MY PLAYLIST 2017>
1. Drake『More Life』
2. King Krule『The OOZ』
3. Kendrick Lamar『DAMN.』
4. Joey Bada$$『ALL-AMERIKKKAN BADA$$』
5. (Sandy) Alex G『Rocket』
6. Future『FUTURE』
7. Kehlani『SweetSexySavage』
8. Mount Kimbie『Love What Survives』
9. あいみょん『青春のエキサイトメント』
10. Calvin Harris『Funk Wav Bounces Vol. 1』
※11位から50位までは昨年のブログ記事にて
昨年はとかくヒップホップ/ポップスが占めたリストになっていました。ドレイクはまさにプレイリスト時代を象徴した作品でしたね。あとは今年大ブレイクしたあいみょんを唯一10位以内に入れてました。
先に言うと、今年は若干国内作品が多いです。実際120枚ぐらい並べた時に90枚近くが海外の作品でしたが、海外メディア然り、個人単位の年間ベスト然り、やはりそのメディア/リスナーの傾向が色濃く滲み出てきますよね。それを強く意識した上で、自身のリストでも国外・国内の作品をより同列に判断すべきだなと感じ、結果昨年より多数の作品がリストインしています。
1〜20位までは再生回数を大きな基準に、その作品性も考慮した形で順位を付けてます。21位以下は順不同、あとは内容の好みや2018年である必然性などを踏まえつつ。
もし余裕があればnoteの方に上位10枚について雑感か総括なんかかければ...
ではどうぞ!
50. Mr.Children - 重力と呼吸
49. Littlebabyangel - GADA
48. けやき坂46 - 走り出す瞬間
47. 小松未可子 - Personal Terminal
46. BAD HOP - BAD HOP HOUSE
45. J.I.D - DiCaprio 2
44. Jorja Smith - Lost & Found
43. 早見沙織 - JUNCTION
42. Pusha T - DAYTONA
41. Aseul - ASOBI
40. Starchild & The New Romantic - Language
39. ものんくる - RELOADING CITY
38. Waxahatchee - Great Thunder
37. Prince - Piano & A Microphone 1983
36. STUTS - Eutopia
35. Melody's Echo Chamber - Bon Voyage
34. UNISON SQUARE GARDEN - MODE MOOD MODE
33. Mac Miller - Swimming
32. SKY-HI - JAPRISON
31. indigo la End - PULSATE
30. Say Sue Me - Where We Were Together
29. Shaqdi - Colorless
28. V.A. - Black Panther: The Album
27. Paul Simon - In The Blue Light
26. aiko - 湿った夏の始まり
25. 三浦大地 - 球体
24. 88rising - Head In The Clouds
23. Anderson .Paak. - Oxnard
22. くるり - ソングライン
21. Vulfpeck - Hill Climber
20. Earl Sweatshirt - Some Rap Songs
19. Snail Mail - Lush
18. Drake - Scopion
17. 折坂悠太 - 平成
16. Saba - CARE FOR ME
15. Cardi B - INVASION OF PRIVACY
14. TAMTAM - Modernluv
13. SOPHIE - OIL OF EVERY PEARL'S UN-INSIDES
12. Janelle Monáe - Dirty Computer
11. Noname - Room 25
10. Kids See Ghosts - KIDS SEE GHOSTS
9. Tierra Whack - Whack World
8. JPEGMAFIA - Veteran
7. 中村佳穂 - AINOU
6. Playboi Carti - Die Lit
5. Clairo - diary 001
4. Joey Dosik - Inside Voice
3. Travis Scott - ASTROWORLD
2. 星野源 - POP VIRUS
1. The 1975 - A Brief Inquiry Into Online Relationships
<MY PLAYLIST 2018>
1. The 1975 - A Brief Inquiry Into Online Relationships
2. 星野源 - POP VIRUS
3. Travis Scott - ASTROWORLD
4. Joey Dosik - Inside Voice
5. Clairo - diary 001
6. Playboi Carti - Die Lit
7. 中村佳穂 - AINOU
8. JPEGMAFIA - Veteran
9. Tierra Whack - Whack World
10. Kids See Ghosts - KIDS SEE GHOSTS
11. Noname - Room 25
12. Janelle Monáe - Dirty Computer
13. SOPHIE - OIL OF EVERY PEARL'S UN-INSIDES
14. TAMTAM - Modernluv
15. Cardi B - INVASION OF PRIVACY
16. Saba - CARE FOR ME
17. 折坂悠太 - 平成
18. Drake - Scopion
19. Snail Mail - Lush
20. Earl Sweatshirt - Some Rap Songs
21. Vulfpeck - Hill Climber
22. くるり - ソングライン
23. Anderson .Paak. - Oxnard
24. 88rising - Head In The Clouds
25. 三浦大地 - 球体
26. aiko - 湿った夏の始まり
27. Paul Simon - In The Blue Light
28. V.A. - Black Panther: The Album
29. Shaqdi - Colorless
30. Say Sue Me - Where We Were Together
31. indigo la End - PULSATE
32. SKY-HI - JAPRISON
33. Mac Miller - Swimming
34. UNISON SQUARE GARDEN - MODE MOOD MODE
35. Melody's Echo Chamber - Bon Voyage
36. STUTS - Eutopia
37. Prince - Piano & A Microphone 1983
38. Waxahatchee - Great Thunder
39. ものんくる - RELOADING CITY
40. Starchild & The New Romantic - Language
41. Aseul - ASOBI
42. Pusha T - DAYTONA
43. 早見沙織 - JUNCTION
44. D.R.A.M. - That's A Girls Name
45. Jorja Smith - Lost & Found
46. BAD HOP - BAD HOP HOUSE
47. 小松未可子 - Personal Terminal
48. けやき坂46 - 走り出す瞬間
49. Littlebabyangel - GADA
50. Mr.Children - 重力と呼吸
世界を動かし始めたJames Blakeの新曲
シェアされてから約1週間あまり、James Blakeの新曲「If The Car Beside You Moves Ahead」のリピート再生が止められない。
彼の音楽における悲壮感や哀愁、名だたるアーティストとのコラボレーションを経ても決して揺るがないその活動スタンスには毎回驚かされる。それでいて今回の新曲では、2018年における自己の進化も加味され、まさにこの2年間の活動を集約した彼の新たなタームを告げるに相応しい作品だ。
同楽曲が公開されるまでの過程を簡単に振り返ってみると、最新アルバム『The Colour In Anything』(2016)リリース後は同作を引っ提げてのワールドツアーを開催。日本にも同年に"FUJI ROCK FESTIVAL'16"に出演。さらに昨年には東京国際フォーラムにて日本にて最大規模の単独公演も成功させている。
楽曲としては、James Blake単独名義の新曲は今作まで発表されなかったが、『The Colour In Anything』からのシングルカットとしてVince Staplesをフィーチャーした「Timeless」をリリース。グライムを踏襲したエフェクト部に差し込まれるVinceのライムは、すでに頭一つ飛び抜けていた彼のスキルをジャンルを超えた先に届ける一つのきっかけになったと言えるだろう(現に2017年にはGorillazのゲストヴォーカルに迎え入れられたほか、自身としても老舗Def Jamより2ndアルバム『Big Fish Theory 』を発表している)。
自身のツアーの合間にはデビュー当時から共にポストダブステップの両翼としてクロスオーバーしてきたMount Kimbieの新作に参加。アルバム『Love What Survives』自身のマルチな引き出しを開け閉めするのではなく、あくまでMount Kimbieが用意したステージで艶めくボーカリストとしての役割に徹していた「We Go Home Together」も必聴の一曲だ。
ボーカリスト、もしくはトラックメイカーとしての役回りにおける彼のエンタメ性の出し所は については、パパラッチに追われるBeyoncéらのようなスターとの仕事による影響もあるだろう。ちなみにトラックメイカー側の彼のエゴイズムの抑制と放出は、先ごろグラミー賞を受賞したKendrick Lamarの最新作『DAMN.』に収められている「ELEMENT.」にて思う存分浴びることができる。
常に時代の矜持たちからその声と発想を求められる存在のJames Blake。個人的に彼がなぜここまで「求められる」のかを考えた時、彼自身、ポリティカルな発言や、またそれらを想起させるようなサウンドに"自身"を投影させないことが挙げられると思う。
彼自身はイギリス人だが、現在のトランプ政権や自身を取り巻く生活で必要最低限の政治的意見ももちろん持ち合わせているだろう。ただ、彼にはKendrick Lamarのように崇高なリリシズムなどないし、親友Chance The Rapperのようにレペゼンを国規模のアクションで行う実行力も求めららていない。だからこそ、純粋無垢かつミステリアスな必要色として、そのアーティストの求めるサウンドカラーをコーティングする存在として重宝されるのではないだろうか。
新曲「If The Car Beside You Moves Ahead」が発表される少し前、Kendrick Lamarと彼の所属クルーTDEがプロデュースを手掛けるマーベル映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックに参加していることも忘れないでおきたい。Jay Rock、Future、そしてKendrickらと共に「King's Dead」にて短いながらエフェクトの効かせたヴォーカルを披露している。エンターテイメント性の高い作品に彼が携わるのも珍しいが、元々音像豊かなアンビエンスを醸し出すサウンドだけに、今後何らかの映画の音楽監修にトライしている姿も見てみたいものだ。
番外編、いや実は彼のバックボーンが最も露わになったのが、昨年のクリスマスイブに公開されたDon McLean「Vincent」のカバーだ。今から46年前、1972年に発表された原曲はフィークの定番曲として世界的に大ヒットしたが、ゴッホの絵画(『星月夜』)に影響された曲である同曲をグランドピアノの弾き語りで歌い上げるJames Blakeは、オリジナル曲とは違う、原曲の描く物語に没入する姿が何とも印象的だ。
新曲「If The Car Beside You Moves Ahead」 が次なる彼のアルバムに収録されるかはわからないが、少なくともそのサウンドや映像を見る限り、間違いなくこれまでとは違う、ネオンライトを突き進むスポーツカーの如き疾走感で走り出したJames Blakeが存在している。すでに"ポストダブステップ"なんて謳い文句はきれいさっぱり消去されたが、ヒップホップ、アンビエント、チルウェイブ、ダークウェブなど、特定のシーンに居座ることなく回遊する彼が、今どこに向かっているのか。それはこれから徐々に明らかになっていくだだろう。
2018年も、またJames Blakeが世界を動かしそうだ。
表通りから逸れた女たちによる「王道」の形:1/7〜1/13
1/7〜1/13の週にリリース・発表された楽曲などを中心に、ウィークリーで自分の感性に引っかかった作品を書き留めていきます。
数もジャンルもバラバラ。音楽ではないコンテンツも今後入ってくると思います。
週間で更新していけるかはわかりませんが、それが習慣になっていけばいいな、と期待しつつ続けていければ。
では第1回目始めます。
<洋楽>
Camila Cabello『camila』
Fifth Harmony脱退後、Young Thug、Quevoとのシングルを挟んでリリースされた初のソロ・デビュー・アルバム。「Never Be the Same」のラジオエディットを加えても全11曲で、トータルタイム36分というコンパクトさも丁度いい。何より、今をときめくヒットメイカーたちがこぞって参加したトラック毎のクオリティーの高さも抜群だ。
適材適所、必要な音しか存在せず、アイドルからアーティスト宣言した時に必死に背伸びをするような付け焼刃は今作には存在しない。前述した通り、それら全てはプロフェッショナルの仕事の下でこそ成立してはいるけど、タイトルに自身の名を掲げるだけあって全曲のソングライティングにはしっかりと"Camila"のクレジットがあることを伝えておきたい。
「The New York Times」のインタビューで答えていた脱退理由からも分かる通り、彼女は"曲を書き歌うシンガー"でありたかったのだろう。Young Thugが客演したシングル「Havana」のヒットで得た成功への道標をしっかり辿ったこのデビュー作は、過剰なまでに自分と周囲を批評するTaylor Swiftや、新時代のディーヴァとして確固たる地位を得たAriana Grande、スキャンダル・スターから解放され、本格的に名盤を生み出そうとしているSelena Gomezらとは違う、2018年に設けられた新たなスターの座に着いたアルバムだ。
ちなみに今作にはQuevoとのシングル「OMG」は収録されていない。アルバムを一聴すれば分かるが、今作には「OMG」に見られる時流に沿ったトラップミュージックは極力排除されているのも非常の興味深い。代わりにムーブメント化したレゲトンや、彼女の出生地に絡んだラテンミュージックがメイントラックとなっていることで、一つの流行を後退させ、新鮮なリズムを前進させるハブとしての役割も担っている。なので今作には反映されてない、ここまでの彼女の校外実習とも言える外仕事にも耳を傾けることも重要で、すなわちアメリカの音楽チャートにおけるトレンドの推移が相対された作品でもあると置き換えることができる(Netflix限定で公開中の『Bright』のサントラに収録された「Crown」、Travis ScottとQuevoらとともに参加したエレポップレゲトン、Major Lazer「Know No Better」などはマストで押さえておいてほしい)。
今作が時代と相思相愛である理由はもう一つある。それは中音域(ボーカルやギターの鳴りなど)がとにかく綺麗に聴こえること。それによってスマートスピーカーやスマートフォンにおける、現行のリスニング環境にフィットしていることだ。僅かなブラッシングが聴こえつつ、Camila Cabelloの声がセンターにくるようなプロセスがなされている。
長々と綴っておきながら、今作におけて一番重要な点は、そんな"聴きやすさ"にある。その"聴きやすさ"についてがここまでの筋道である。音楽に思慮深い人も電車でたむろする女子高生も、皆が並列して聴くことができる作品として、このデビュー作は2018年にこそ聴かれるべきだと思う。
【その他のリスニング作品】
1. Jonny Greenwood『Phantom Thread OST』AM | Spotify
2. Maxo Kream『Punken』AM | Spotify
3. Jack White『Connected by Love』AM | Spotify
4. Shame『Songs of Praise』AM | Spotify
5. Black Eyed Peas「Street Livin'」AM | Spotify
6. Jay Rock, Kendrick Lamar, Future, James Blake「King's Dead」AM | Spotify
7. soccer mommy「Your Dog」(3/2リリースの新作『Clean』より)Bandcamp
8. kendrick Lamar CFB National Championship Half Time Show(「DNA.」「ELEMENT.」「HUMBLE.」「All the Stars」)
Watch Kendrick's full Halftime Show performance for the CFP National Championship. pic.twitter.com/zGgzU3pKRA
— DUCKWORTH TDE (@DuckworthTDE) 2018年1月9日
9. David Bowie「Let's Dance (Demo)」AM | Spotify
<邦楽>
乃木坂46『僕だけの君 ~Under Super Best~』
テレビを付けてみても、チャンネルを変えてみても、書店で雑誌コーナーを見ても、スマートフォンの広告バナーが表示されても、とにかく至るところに彼女たちがいた2017年。
結成から7年目を迎えた乃木坂46は、2017年に一つの絶頂期を迎えた。活動初期からグループを支えたメンバーの卒業、人気と比例して押し寄せる数多の仕事のオファー。満を持して迎えた初の東京ドーム公演。そして紅白歌合戦まで続く一連の状況は、絶頂期を物語ると同時に、グループの"これまで"と"これから"を隔てる転換期でもあったと言える。
1月10日にリリースされた『僕だけの君 ~Under Super Best~』は、2011年から活動を続けてきた彼女たちの、紛れもないベストアルバムであると同時に、"アンダー"という存在を大肯定する作品集だ。ファンの人にとってみれば選抜だろうがアンダーだろうが、自分の推すメンバーやグループそのものにスポットライトが当たれば満足かもしれない。ただ、当の本人たちは"白石麻衣、西野七瀬、生駒里奈がいない乃木坂46"について常に向かい合わざるをえない。"アンダー"メンバーにとってのスポットライトとは、単にステージの上に立っていること、それだけではないのだ。
1stシングル『ぐるぐるカーテン』から最新シングル『いつかできるから今日できる』までと3枚のオリジナルアルバムに収録されたアンダー楽曲、そして4曲の新録曲をほぼリリース順に並べた今作。1曲目「左胸の勇気」はデビュー当初のフレッシュなグループの様子を閉じ込めており、現在では選抜として活躍する齋藤飛鳥がアンダーメンバーだった頃に初センターを務めた「扇風機」など、時間の流れを実感出来る楽曲が序盤に並ぶ。
2017年末のレコード大賞受賞や紅白歌合戦を観た新しいリスナーにとっては、今作には「インフルエンサー」などから発せられたクールでダンサブルなイメージを受けるような曲が多くない分、初めて手に取る作品としては少し面喰らってしまうかもしれない。それでも「嫉妬の権利」や「My rule」などは素直に楽曲の質の高さを感じることができる。そして「アンダー」という楽曲を歌詞を読み返しながら聴くだけでも、このアルバムのコンセプトを理解することができるはずだ。
デビューからのファンは特に新録された4曲に目がいくはずだろう。卒業した中元日芽香の初のソロ曲にしてラストソングである「自分のこと」は、グループをプロデュースし作詞を手がけた秋元康から彼女に向けられた最大のはなむけの言葉が綴られている。続く「自惚れビーチ」はアンダー楽曲として初の夏ソングにして、2期生の鈴木絢音が初センターに立ったアップチューンだ。高飛車なまでに強気な女の子に、ただただ振り回される男子たちのありのままを描いた楽曲がライブではどう表現されるか、今からとても楽しみだ。
同じく2期生の寺田蘭世がセンターとなった「その女」は、アンダーの多彩な表情が浮かび上がる変化球としてつかみどころのない楽曲に各メンバーの個性が滲み出ている。作詞家ではなく作家:秋元康が顔を出した曲であり、ラテンのリズムをベースにポエトリーディングの出だしから始まるその辺鄙さも、とても乃木坂らしいと今なら思える。そして、乃木坂46のアンダーメンバーとして胸を張り、ファンとの関係性を切ないメロディーに乗せて歌う「誰かのそばにいたい」でアルバムの幕が閉じる。最後にアンダーからリスナーへ向けられた「こうでありたい」という柔らかくも確かなメッセージは、転換期を迎えたグループを支える決意表明にも感じられた。
アンダーメンバーは選抜と違う。その呼称から同グループにおいて必然的に上下関係が生まれてしまった時期もあったはず。そして今は横にも縦にも属さない3期生の存在も忘れることができない。個人の活動はもちろん、選抜、アンダー、3期生という括りに対して、今後メンバーそれぞれがどんな向き合い方をするか。それは乃木坂46自体の行く末を決めることになると思う。
「Real Sound」のインタビューにて、1期生の樋口日奈は「選抜にずっといたい」と発言している。それはアンダーが嫌だとかではなく、乃木坂46を引っ張っていける存在でありたいという決意からのものだ。同インタビューで寺田は「『らしさ』を大事にしたい」と口にしているのも面白い。個人の意見や主張が違ってこそ、グループとして集まった時に予測できない化学反応が生まれる。今作の歴史=アンダーらしさがこれまでの乃木坂らしさと掛け合わされた、2018年の乃木坂46はより魅力的なアイドルとして活躍するに違いない。
【その他のリスニング作品】
1. PENGUIN RESEARCH『近日公開第二章』AM | Spotify
2. わーすた「WELCOME TO DREAM」AM | Spotify
3. 雨のパレード「What's your name?」AM | Spotify
4. フルカワユタカ『Yesterday Today Tomorrow』AM | Spotify
5. ヤバイTシャツ屋さん『Galaxy of the Tank-top』AM | Spotify